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2006/9/3
第七話
2003年6月、制作途中のアルバムを残して部署は閉ざされ奥華子は事務所を離れた。
「これからどうしよう?」と言ってる矢先に一人の女性が手を上げた。
「華ちゃんは絶対いい声持ってるんだから何とかなると思うよ!」
「何も持ってなくてもメディアで売れる人とは違う売り方すれば、、」
「あたしがマネージャーであなたはサウンドプロデューサー!」
「よしっ!決まり、残ってるわずかなお金でデモテープ作ってプレゼンし直そう!」
「ソニー、東芝、エイベックス、、だね、、ん」
「ただ、一回周ってるから違う曲持っていかないとね、、」「そうだね、まず新曲だ!」
そしてここからが凄かった、まず始めたのはパソコンの特訓。
デモテープはカセットに録音し、コードの事を「線」と言い、パソコンも月に2〜3度の開封、ここまで機械オンチな女の子に「パソコンに音を録音しデータのやり取りをする」という高度な事を電話だけで伝授する事になったのだった。寿司屋とコンビニのバイトで食い繋いでいる彼女にとって1000円のコードも10000円の音楽ソフトも256Mのメモリーも全て高価だった。ヤマダ電機で買ったコードの種類はいつも間違えて損ばかりしていた。
ソフトはフリーの物を使った、メモリーはオークションだった。
音源は8000円、インターフェイスは6000円MIDIケーブルは500円、、ってな感じで始まった。
「まず、一番右の穴にさした線をこの間買った機械の一番左に入れて、、、、」
 毎日、毎日続いた、それも仕事の後から明け方まで、、。
電話代はいくらあっても足りなかった、インターネットでの説明も加わりさらに時間は延びて行った。睡眠不足の日々はこの後もかなり続いた。
当時、電話の向こうで、パソコンの向こうで奥華子はいつも声を詰まらせ、泣きながら、キーボードを打っていた。
時には「大人なんだから世の中に税金ちゃんと払わないと認めない!」
的なレベルの会話ですら怒って話していたし、怒られて泣いていた。
彼女の心の中の「ラストチャンスなんだ、、」「この毎日の苦痛は絶対乗り越えるんだ、、」
「過去は捨てて変身するんだ、、」の根性と気迫には凄い物を感じたし、
だからこっちも手を抜くわけには行かなかった。
だから怒り続けた、、変わらないと無理なんだと、、。
そして1〜2ヶ月後には毎日のようにデータで音が送られてくるようになった。
しかし、、「暗い!」「つまらない!」「歌詞がいまいち!」「もっと身近な詩がほしい、、」
女性マネージャーと僕は言い続けたのだった。
彼女からしたら、一難去って又一難、の日々の連続だっただろう、、。
「あれっ?これいいじゃない?」「ん、、いいかもね、、」
最初に認めた一曲、、「小さな星」、、。
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